金属加工の現場では、よく出てくる言葉が「試作」「量産試作」「量産」 の3つです。
なんとなく意味はわかるけれど、
- 実際どこからどこまでが「試作」なのか
- 「量産試作」って何が違うのか
- 見積もりや発注のとき、どれで頼めばいいのか
で迷う方も多いはずです。
このコラムでは、金属加工の現場目線で、試作・量産試作・量産の違いをわかりやすく整理していきます。
1.ざっくりイメージ:3つのステージ
まずは、感覚的なイメージから。
- 🧪 試作(プロトタイプ)
→ 「まずは形にしてみよう」の段階。 - 🔁 量産試作(パイロット・プレ量産)
→ 「このやり方でたくさん作って大丈夫か?」を確認する段階。 - 🏭 量産(本生産)
→ 「決まった条件で、安定して作り続ける」段階。
同じ“モノづくり”でも、目的・ロット数・コストの考え方・必要な精度 がそれぞれ違ってきます。
2.「試作」とは?──アイデアを現物にするフェーズ
2-1.目的
試作の一番の目的は、図面や3Dデータのアイデアを、“触れるモノ”にして確認すること です。
- 形状・寸法・干渉が成立しているか
- 使用感・組み付け性・操作性はどうか
- 外観イメージや質感は狙い通りか
といった 「設計の答え合わせ」 が中心です。
2-2.ロットと単価のイメージ
- ロット:1個~数個、多くても10~20個程度 が一般的
- 単価:
- 治具・専用工具・量産用プログラムを作り込まないため、
- 1個あたりの単価はどうしても高くなりがち です。
「まずは1個でいい」「展示会に出すモデルが1台だけ欲しい」という場合も、ここに当たります。
2-3.加工・品質の特徴
- 加工方法は、NCフライス、マシニング、旋盤、切削+簡易治具 など柔軟
- 手仕上げや現場の工夫で、短納期対応することも多い
- 設計変更を前提にしているため、
「量産と同じ条件で再現性を保証する」ことまでは求めない のが普通です。
3.「量産試作」とは?──量産に行く前の“総合リハーサル”
「量産試作」は、“試作”と“量産”の間にある、とても重要なステージ です。
3-1.目的
一言でいうと、
「量産と同じ条件で試し打ちして、本当に回るか確認する」
のが量産試作です。
具体的には:
- 量産時と同じ、または近い設備・治具・プログラムで加工してみる
- 工程能力(バラつき)や品質トラブルの有無を確認する
- 段取り時間・サイクルタイム・歩留まりを測り、
量産時のコスト・納期の見通しをつける
という役割があります。
3-2.ロットと単価のイメージ
- ロット:数十個~数百個程度 が多い
- 自動車部品などでは、量産立ち上げ前に「○○個で量産試作」などと決められることも。
- 単価:
- 治具やプログラム、検査方法を整えるため、
- 純粋な“量産品”よりはやや高め
- ただし、試作よりは量産に近い単価 になっていきます。
3-3.加工・品質の特徴
- 「量産を想定した治具・工程設計」で加工
- 工程表・検査成績書など、量産用の管理資料も整備されることが多い
- 顧客側の量産承認(PPAP、初品承認、量産準備完了判定など)のために、
量産試作品を使って評価・信頼性試験を行う ことも一般的です。
4.「量産」とは?──決めた条件で淡々と作り続けるフェーズ
4-1.目的
量産の目的は、とてもシンプルです。
「決めた品質・コスト・納期(QCD)を、安定して出し続ける」
こと。
ここまで来ると、
- 図面・仕様・工程条件は基本的に“凍結”
- 頻繁な設計変更は避けたい
- 品質トラブルは、取引先・エンドユーザーまで影響するリスクが大きい
という、**「本番運転」状態になります。
4-2.ロットと単価のイメージ
- ロット:
- 月数百個~数千個、案件によっては万個単位も
- 単価:
- 段取り改善、治具最適化、工具選定、サイクルタイム短縮などの努力が効いて、
- 1個あたりの単価は最も安くなるゾーン です。
4-3.加工・品質の特徴
- 工程は標準化され、作業標準書・検査基準書も整備
- ロットごとのトレーサビリティや品質記録が重要
- 不良を出さない仕組み(ポカよけ治具、工程内検査、SPCなど)が組み込まれる
5.3つの違いを一覧で整理してみる
| 項目 | 試作 | 量産試作 | 量産 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 形状・構造・機能の確認 | 量産条件での検証・承認 | 安定生産・コスト最適化 |
| ロット規模 | 1〜数個(〜10〜20個程度) | 数十〜数百個 | 数百〜数千・万個単位 |
| 単価傾向 | 最も高い | 中間(試作より安く量産より高い) | 最も安い |
| 加工方法 | 柔軟、手作業・簡易治具多め | 量産と同等の工程・治具 | 標準化された量産ライン |
| 設計変更の頻度 | 多い(前提) | まだあり得る | 原則少ない/都度大きな影響 |
| 品質管理 | 機能確認レベルが中心 | 工程能力・評価・承認が重要 | SPC・トレーサビリティなど重視 |
6.じゃあ「どのフェーズ」で依頼すべき?
発注する側からすると、
「これは試作扱いで頼むのか?」
「量産試作と言うべきなのか?」
「もう量産前提で見積もってもらうべきか?」
と迷いやすいポイントです。
6-1.こんなときは「試作」向き
- まだ図面や仕様が固まりきっていない
- 組んでみてから、形や公差を調整したい
- 社内検討用・展示会用モデルが欲しい
→ とにかくまず現物を見たいとき は、「試作」で相談するのが向いています。
6-2.こんなときは「量産試作」向き
- 量産を前提とした案件がほぼ決まっている
- エンドユーザーの評価/承認試験用のロットが必要
- 量産時の単価と工程イメージを事前に固めたい
→ 「その先に量産ありき」の段階 なら、「量産試作」と伝えた方が、加工側も工程設計や見積もりを量産目線で組み立てやすくなります。
6-3.こんなときは「量産」前提
- 年間○○個など、具体的な数量計画が見えている
- 図面・仕様もほぼFIX
- 単価を最優先で詰めたい
→ この場合は、量産前提で見積もりを依頼し、必要なら「量産試作ロットもセットで相談」するのが現実的です。
7.「量産試作.com」がお役に立てるポイント
金属加工の現場では、
- 試作は得意だけど、量産まで見ると別の会社…
- 量産は得意だけど、開発初期の少量には対応しづらい…
ということもよくあります。
逆に言うと、
「試作 → 量産試作 → 量産」を一気通貫で見てくれるパートナー
がいると、
- 設計変更の履歴をちゃんと理解したうえで相談できる
- コスト・工程の見通しを、早い段階から共有できる
- 「試作のときは良かったのに、量産になったら話が違う」が起こりにくい
といったメリットがあります。
「量産試作.com」では、
- 試作一点ものの相談
- 量産試作ロットでの検証
- その先の量産展開の見通しづくり
まで、金属加工の“つなぎ目”を意識した提案 をしていくことを大事にしています。
8.まとめ
- 試作:アイデアを形にして、設計の答え合わせをするフェーズ
- 量産試作:量産条件で試し打ちして、「本当に回るか?」を確認するフェーズ
- 量産:決めた条件で、安定して作り続けるフェーズ
同じ“モノづくり”でも、目的・ロット・単価の考え方・求められる品質が違います。
もし、
「自分の案件がどのフェーズに当たるのかよくわからない」
「試作のつもりで頼んだけど、その先の量産まで見据えた相談をしたい」
という場合は、まずは
「試作なのか量産試作なのか、相談しながら決めたい」
と伝えてもらえれば、こちら側で整理しながら最適な進め方を一緒に考えることができます。
