試作が高いのはなぜ?6つの要因をわかりやすく説明!試作コストを賢く抑える5つのポイントを紹介

製造メーカーや調達担当の方から、よくこんな声を聞きます。

「量産より個数が少ないのに、どうして試作の方がこんなに高いの?」
「見積りを見て“単価×数量”で計算したら、思ったより高くて驚いた」

実は、試作と量産ではコストの構造そのものが違うため、
同じ「1個あたりの単価」で比べると、どうしても試作の方が割高に見えてしまいます。

この章では、金属加工の現場目線で
「なぜ試作のコストは高く見えるのか」を分解し、
そのうえで依頼側が上手にコストコントロールするポイントまで整理します。


1.試作と量産では「前提」がまったく違う

まず押さえておきたいのは、試作と量産の大きな違いです。

  • 試作
    → 設計の確認・評価・改良が目的。
    仕様も変更前提で、「まず作ってみる」段階。
  • 量産
    → 決めた仕様で、安定して作り続けるのが目的。
    工程・治具・段取りを徹底的に最適化し、単価を下げていく段階。

つまり、試作は

「設計と製造の“テストステージ”のコストが、ほとんどそのまま1個に乗ってくる」

フェーズであり、
量産は

「最初の立ち上げコストを、多数個で割り算していく」

フェーズです。

この構造の違いが、そのまま見積りの違いとして表れます。


2.試作コストを押し上げる6つの要因

2-1.段取り・立ち上げ工数が“丸ごと1個に乗る”

試作でも、量産と同じように

  • 段取り
  • 加工プログラム作成
  • 試し削り・条件出し
  • 段取り替え

といった立ち上げ作業は必ず発生します。

ところが、試作では

  • 「1個~数個」のために
  • ほぼフルセットの立ち上げ工数が必要

になるため、この立ち上げコストがほぼ1個で負担する形になり、
結果として単価が高く見えるのです。


2-2.治具・工具・プログラムの開発費が分散しにくい

試作といえども、精度が必要な部品や複雑形状の部品では

  • 専用治具の設計・製作
  • 専用刃物の選定・購入
  • 3D CAMデータやNCプログラムの作り込み

が必要になることがあります。

量産であれば、

「最初に多少コストをかけてでも、1個あたりのコストで回収できる」

のですが、試作ロットが極端に少ない場合は、

「開発費を数個で割るしかない」

ため、どうしても1個あたりの負担が重くなります。


2-3.段取り替えとラインの“割り込み”による機会損失

現場側から見ると、試作は多くの場合

  • 既存の量産ラインや汎用機のスケジュールに割り込ませて行う作業

になります。

つまり、

  • 試作を入れるために既存の段取りを一度外す
  • 一時的に量産を止めたり、ラインの流れを変えたりする
  • 試作後に、また元の段取りに戻す

という**「二度手間・三度手間」**が発生します。

このとき現場では、
単純な加工時間だけでなく、

  • 段取り替えによるロス時間
  • 機械を専有している時間(他の仕事を断る/遅らせることによる機会損失)

も含めて、試作のコストを見積もっていることが多いのです。


2-4.「試作だからこそ」増える品質確認の手間

試作は、単に形を作るだけでなく、

  • 設計の妥当性確認
  • 寸法・形状・性能の検証
  • 顧客やエンドユーザーの評価用

といった目的を兼ねるため、品質確認の密度が高くなりがちです。

例えば:

  • 三次元測定機でのフル測定
  • 測定結果のまとめ(検査成績書・レポート)
  • 必要に応じた追加測定・写真撮影・トレーサビリティ記録

など、量産に入る前だからこそ
「いつもより丁寧に測る・残す」 ことが多くなります。

これらの工数は、「見えにくいコスト」ですが、
試作の見積りにはきちんと含まれます。


2-5.材料・外注費が“割高条件”になりやすい

試作では、材料や外注についても次のような要因で割高になりがちです。

  • 材料を1本単位で購入するしかない(端材・余りが多い)
  • 特殊材やサイズが必要で、少量だと仕入れ条件が悪い
  • 表面処理・熱処理などの外注も、少量だとロット割りが効かない
  • 短納期対応の割増費用が発生することがある

量産では、「ロット単位での仕入れ」「定期発注」で単価を下げていけますが、
試作はどうしてもスポットかつ少量の取引になりやすく、
その分、材料・外注費も1個あたりの負担が大きくなります。


2-6.「設計変更リスク」を見込んだ“保険”も含まれる

試作段階では、設計が完全に固まっていないことが多く、

  • 寸法や形状が途中で変わる可能性
  • より高精度加工への変更が突然入る可能性
  • 評価結果を受けて作り直しになる可能性

など、不確定要素がどうしても残ります。

加工側からすると、

「手戻りや作り直しが発生しても、赤字にならないように」

ある程度のリスクを見込んだ見積りにせざるを得ず、
それもまた、試作の単価を押し上げる一因になります。


3.見積書のどこに「試作ならではのコスト」が隠れているか?

試作の見積書をよく見ると、
次のような項目が「試作ならではのコスト」として含まれていることが多いです。

  • 段取り費・段取り時間
  • プログラム作成費・CAM費
  • 治具製作費(または冶具償却費)
  • 試作立ち上げ一式
  • 検査・測定・成績書作成費
  • 特急・短納期対応の割増

もし「なぜこの金額になるのか?」と感じた場合は、

「この中で、量産に移行したらどの費用が薄まるのか?」

を一緒に確認してみると、

  • 今回の試作はどこにお金がかかっているのか
  • 量産時にどこまで単価が下がりそうなのか

を整理するヒントになります。


4.依頼側ができる「試作コストを賢く抑える」5つのポイント

試作のコスト構造を理解したうえで、
依頼側で工夫できるポイントもあります。

4-1.「変更が多そうなところ」と「変えない前提のところ」を分ける

設計段階で、

  • まだ詰め切れていない部分(今後変わりそうな部分)
  • すでに仕様が固まっている部分(変えたくない部分)

をあらかじめ整理し、
試作依頼時にその情報を共有しておくと、

  • 全体を高精度・高コストで作るのではなく
  • 「ここは仮仕様で簡易加工」「ここだけ量産前提の精度」といった作り分け

の提案がしやすくなります。


4-2.優先順位(QCD)をはっきり伝える

試作の段階から、

  • 今回はとにかく納期優先
  • コストは多少上がっても、評価試験に間に合うことが最優先
  • 逆に、スケジュールに余裕があるので、コスト重視で進めたい

などの 優先順位 を伝えておくと、
加工側も

  • 段取りをどう組むか
  • どこまで工程を作り込むか
  • どこまで検査を厚くするか

を調整しやすくなり、結果として無駄なコストの発生を防ぎやすくなります。


4-3.将来の量産見込みをセットで伝える

試作時点で、

  • 年間○○個程度の量産を想定している
  • 量産に移行した場合、何年くらい継続しそうか

といった情報があると、加工側は

  • 量産を見据えた治具・工程設計
  • 試作段階からのコストダウン計画

を立てやすくなります。

結果として、

「今回の試作はこの単価ですが、量産に入るとここまで下げていけそうです」

といった中長期の見通しとセットで議論できるため、
「高いか安いか」だけでなく「投資として妥当か」を判断しやすくなります。


4-4.試作対象をまとめて依頼する

案件によっては、

  • 似たような形状の部品が複数ある
  • 同じような工程を通る部品がいくつかある

といったケースもあります。

その場合、

「部品ごとにバラバラに試作依頼」
ではなく
「一括で試作ロットとして相談」

することで、

  • 共通治具・共通段取りで対応できる
  • 材料や外注ロットをまとめられる

といったメリットが出て、相対的にコストを抑えやすくなります。


4-5.「見積の考え方」を遠慮なく聞いてみる

BtoBの試作案件では、

「なぜこの金額なのか、きちんと説明できる加工メーカーかどうか」

も重要なポイントです。

  • 段取り工数
  • プログラム作成
  • 治具・検査の考え方

などについて、
「どこにコストがかかっていますか?」 と素直に聞いてみることで、

  • 無駄を削る余地はないか
  • 次回からの頼み方をどう工夫できるか

といったヒントが見えてきます。


5.まとめ:試作は「割高」ではなく「役割が違う」

試作のコストは、量産の単価と比べるとどうしても高く見えます。
しかし、その背景には、

  • 段取り・立ち上げの工数が丸ごと乗っていること
  • 治具・プログラム・検査など、立ち上げそのもののコストを少数で割っていること
  • 設計変更リスクや品質確認の手間が、試作段階に集中していること

といった**“役割の違い”**があります。

試作は、「失敗しても許される、最後の検証の場」
量産は、「検証結果をもとに、安定して作り続ける場」

という性格の違いを理解したうえで、
依頼側・加工側が情報を共有しながら進めていくことで、

  • ムダなコストを抑えつつ
  • 必要な評価をきちんと行い
  • スムーズな量産立ち上げにつなげる

ことができます。

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