JIS G 3191:2012「熱間圧延棒鋼及びバーインコイルの形状,寸法,質量及びその許容差」とは?
「JIS G 3191」は、熱間圧延の棒鋼・バーインコイルについて、形状・寸法・質量とその許容差を決めている規格です。
丸鋼・角鋼・六角鋼・バーインコイルなど、
機械部品や建築・土木用途の“素材”として使われる棒鋼を扱うときに、
- どんな径・長さを「標準」とするか
- どこまでの寸法差ならOKか
- 質量(kg/m)をどう計算するか
といった共通ルールを提供してくれるのが、このJISです。
なお、2012年版(JIS G 3191:2012)は、現在は2022年版に改正されて“置き換え済み”ですが、
カタログや古い図面にはまだ「JIS G 3191:2012 準拠」と書かれたものも多いため、
本コラムでは2012年版の内容をざっくり解説します。
1. 基本情報をざっくり整理
まずは仕様書の「1.適用規格欄」に書きたくなる情報を表で整理します。
| 項目 | 内容(2012年版の概要) |
|---|---|
| 規格番号 | JIS G 3191:2012 |
| 正式名称 | 熱間圧延棒鋼及びバーインコイルの形状,寸法,質量及びその許容差 |
| 英語名 | Dimensions, mass and permissible variations of hot rolled steel bars and bar in coil |
| 対象 | 熱間圧延で製造された棒鋼・バーインコイル(丸鋼・角鋼・六角鋼など) |
| 規定している内容 | 外観、形状、寸法の表し方、標準寸法(径・長さ)、寸法の許容差、質量とその許容差など |
| 関連規格 | 数値の丸め方:JIS Z 8401 など |
| 改正 | JIS G 3191:2022で改正・置き換え(最新適用は2022版を確認すること) |
2. 用語と対象となる鋼材のイメージ
JIS G 3191では、まず扱う鋼材の種類を定義しています(要約)。
- 棒鋼
熱間圧延で棒状にした鋼材を所定長さに切断したもの。
断面形状によって、丸鋼・角鋼・六角鋼に分かれる。 - 丸鋼
断面が円形の棒鋼。 - 角鋼
断面が正方形の棒鋼(角にRがついているタイプも含む)。 - 六角鋼
断面が正六角形の棒鋼。 - バーインコイル
熱間圧延した棒鋼を、切らずに長尺のままコイル状に巻いた鋼材。
特殊鋼の場合は「線材」と呼んで区別することもある、という注記付き。
ポイント:
この規格自体は「材質グレード(強度・成分)」を決めるものではありません。
あくまで “棒鋼という形のモノ”の寸法・形状・質量をどう扱うかのルール です。
3. 規格の構成(何が決まっているか)
2012年版の構成をざっくり言葉でならすと、こんな感じです。
- 適用範囲
- 引用規格(JIS Z 8401 など)
- 用語および定義
- 寸法の表し方(径・辺・長さの単位など)
- 標準寸法(標準径・標準長さ)
- 寸法の許容差(径・辺・長さの許容差)
- 質量(計算質量の考え方)
- 質量の許容差
- 外観(きずの扱い、手入れ条件 など)
設計・調達目線では、主に「5〜8章あたり」がよく使う部分になります。
4. 標準寸法(径・長さ)の考え方
4-1. 丸鋼・バーインコイルの“標準径”
JIS G 3191:2012では、
丸鋼(バーインコイル含む)の「標準径」を、数mm刻みの一覧表で規定しています。
代表的な部分だけ抜粋すると:
| 区分 | 代表的な標準径の例(mm)※抜粋・イメージ |
|---|---|
| 細径側 | 5.5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13 など |
| 中径 | 16, 19, 20, 22, 24, 25, 28, 30, 32 など |
| 太径側 | 36, 38, 42, 46, 50, 55, 60, 64, 70, 75…100 など |
| 極太側 | 110, 120, 130, 140, 150, 160, 180, 200 など |
※実際のJIS表では、括弧付きの“補助径”(例: (14), (18), (27)…)も規定されており、
「括弧の付いていない径の適用が望ましい」 とされています。
現場での意味:
- カタログや図面で “JIS G 3191標準径”と言っているとき、基本はこのリストの中の径を使う、という話。
- 逆に、標準径から外れた寸法を指定すると、特注や加工手間につながることが多くなります。
4-2. 棒鋼の標準長さ
棒鋼の標準長さも、規格で一覧が決められています。
代表的には、3.5〜10mまで 0.5〜1m刻みで標準長さが並んでいます(例:3.5m, 4.0m, …, 10.0m)。
| 標準長さの例(棒鋼) | 備考 |
|---|---|
| 3.5 m, 4.0 m, 4.5 m | 短め〜中くらいのバー材 |
| 5.0 m, 5.5 m, 6.0 m, 6.5 m | 汎用的に使われる長さレンジ |
| 7.0 m, 8.0 m, 9.0 m, 10.0 m | 長尺材として扱われる領域 |
バーインコイルの場合は、
「長さ」ではなく、注文総質量や1コイル当たりの質量を指定する運用になります。
5. 寸法の許容差のイメージ
JIS G 3191では、寸法の許容差を大きく二つに分けて規定しています。
- 径・辺・対辺距離の許容差&偏径差
- 長さの許容差
5-1. 径・辺・対辺距離の許容差
棒鋼・バーインコイルの径(丸鋼)・辺(角鋼)・対辺距離(六角鋼)について、
径の大きさごとに“±○mm程度”の許容差と、偏径差(同一断面でのバラツキ限度) が決められています。
イメージとしては:
| 径の大きさのイメージ | 許容差のイメージ |
|---|---|
| 細径(16mm未満) | ±0.4mm 程度のレンジ |
| 中径(16〜28mm 未満) | ±0.5mm 程度のレンジ |
| さらに太径 | 径に応じて少しずつ許容差が広がる |
※正確な数値が必要な場合は、必ずJIS原本の表3を確認してください。
“偏径差” とは、
同じ断面の中で、一番大きい径(または辺)と一番小さい径(または辺)の差
のことで、これも「全許容差の○○%以下」といった形で規定されています。
5-2. 長さの許容差
棒鋼の長さについては、例えば:
- 7m以下の棒鋼 → プラス側に数cm程度の余裕、マイナス側はほぼゼロ(短いのはNG)
- 7mを超える棒鋼 → 1m増えるごとに、プラス側許容差が少しずつ加算
という形で、「短いのは困るが、長い分には切ればいいのである程度許容」とする思想になっています。
6. 質量とその許容差
6-1. 計算質量の考え方
棒鋼の質量は、基本的には**“計算質量”**で扱います(バーインコイルは実測)。
考え方はシンプルで:
- 鉄鋼の密度 7.85×10⁻³ kg/(mm²・m) をベースに
- 断面積(mm²)を掛けて 「kg/m」 を出す
- さらに長さ(m)と本数を掛けて総質量を出す
丸鋼・角鋼・六角鋼の断面積の求め方は、規格中では
- 丸鋼:πD²/4(D=径)
- 角鋼:辺²
- 六角鋼:対辺距離を使った式
といった形で整理されています(詳細式はJIS表5を参照)。
6-2. 質量の許容差
質量の許容差も、
「計算質量と実測質量の差を、計算質量で割った百分率」で評価するルールが示されています。
- 注文時に「質量許容差○%」を指定する場合
- 出荷検査でロットの質量をチェックする場合
などに、この考え方が使われます。
7. 外観(きず・手入れ)の考え方
最後に、実務で意外と効いてくるのが外観の条文です。
- 棒鋼・バーインコイルには、使用上有害な傷があってはならない
- バーインコイルは、コイル形態の都合上、多少“完璧でない部分”を含んでもよい
- 棒鋼表面の傷を削り取る場合(チッピング・グラインダ仕上げなど)は
- 手入れ後の寸法が表示寸法の95%以上であること
- 手入れ部と圧延まま面の境が滑らかであること
など、**「どの程度までなら手入れして出荷してよいか」**のルールも示されています。
8. 設計・調達・加工での活かし方
JIS G 3191:2012(および最新版2022)は、
“棒鋼という素材”を扱うすべての人が共有する「物差し」 です。
- 設計:
- 標準径・標準長さを意識して寸法を決めることで、入手性・コストを改善
- 許容差を理解して、「どこまで寸法を詰める必要があるか」を検討
- 調達:
- カタログ表記の「JIS G 3191準拠」が何を意味するか理解できる
- 質量計算やロット受入検査で、JISルールをベースに会話できる
- 加工・品質:
- 素材段階の許容差を前提に、加工後の図面公差をどう設定するかを検討
- 外観きずの手入れ条件を、JISの範囲内で判断できる
まとめ
- JIS G 3191:2012は、熱間圧延棒鋼・バーインコイルの形状・寸法・質量とその許容差を定めた規格。
- 設計・調達・加工の「共通言語」として、標準径・標準長さ・許容差・質量計算のルールを提供している。
- 精密部品そのものの性能規格ではなく、「棒鋼という素材レベルの寸法・質量の共通ルール」と理解すると整理しやすい。
- 実務で正確な数値が必要なときは、必ず最新のJIS原本(現在はJIS G 3191:2022)を参照すること。
