JIS G 3193「熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状,寸法,質量及びその許容差」とは?
――黒皮板を“そのまま”使う設計者のための公差の考え方
1. この規格はなにを決めている?
JIS G 3193 は、熱間圧延の鋼板・鋼帯(切板を含む)について、形状・寸法・質量とその許容差を決めている規格です。
ポイントだけ表にすると:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 規格番号 | JIS G 3193 |
| 正式名称 | 熱間圧延鋼板及び鋼帯の形状,寸法,質量及びその許容差 |
| 英語名 | Dimensions, shape, mass and permissible variations of hot rolled steel plates, sheets and strips |
| 対象 | 熱間圧延の鋼板・鋼帯(切板含む)。平鋼(フラットバー)は対象外 |
| 何を決めている? | 厚さ・幅・長さの表し方、標準寸法、寸法公差(厚さ・幅・長さ)、平坦度、質量とその許容差、外観(きず・耳割れなど) |
材質(SS400やSPHCなど)は別の製品規格(JIS G 3101 等)で決まり、
G 3193 は「板という形」の寸法と公差のルールだと捉えると整理しやすいです。
2. 「呼び板厚」と実際の板厚の関係
設計図面やカタログで「t=9」「t=12」と書いてある板厚は、
あくまで“呼び板厚”=公称値 です。
実物の黒皮板は、圧延条件などの影響で、JIS G 3193 の規定する範囲で板厚が振れます。
- 厚さ方向には、板厚ごとに ±○mm の許容差 が規定されている
- 実際には、メーカー独自の内部基準で JISよりも少し狭い公差 をうたっているカタログも多い(例:JFE、Nippon Steelのホットコイル仕様書)
設計での注意点:
- 「t=9」と図面に書いても、実板は「約8.8〜9.2mm」程度で振れるイメージ(数値はあくまでオーダー感)。
- 精密な段差やすき間基準に黒皮板厚をそのまま使うと、ロット・メーカーによって段差が変わる。
👉 板厚は「強度・剛性の大まかなレベルを決める値」と割り切り、
精密な基準高さは別部品や加工面でつくるのが安全です。
3. 幅・長さの許容差と「切板」の落とし穴
3-1. 幅の許容差(ミルエッジ vs シャー切り)
G 3193 では、鋼板・鋼帯の幅方向の許容差が、板厚・幅・切断状態などに応じて表で決められています。
- ミルエッジ(圧延のままの耳)
- シャー切り(切断した耳)
で扱いが変わり、一般にシャー切りの方が幅公差がタイトに管理しやすいです。
設計での注意点:
- 「フレームにはめる板をギリギリ幅で設計」すると、耳のバラつき+平行度+直角度で入らないことがある。
- 板の幅を“きっちり基準”にする設計は危険で、周囲フレーム側に余裕を持たせ、位置決めは別の基準穴・ピンで行う方が無難。
3-2. 長さの許容差
長さ方向も、板長さごとに「+○mm / −0mm」などの許容差が設定されています。
- 短い板:プラス側に数mm程度の余裕、マイナスは基本 0
- 長い板:長さが増えるにつれ、許容差も段階的に広くなる
設計での注意点:
- 「長さちょうどで突き当て固定」設計は、実板が短いとどうしようもない。
- 端部に隙間が許される構造にし、ボルト穴位置やストッパーで位置決めするほうが現実的。
4. 平坦度(ソリ・波打ち)の現実
G 3193 では、板の平坦度(うねり、そり)の許容限度も規定されています。
- 板の厚さ・幅ごとに、「最大反り量○mm/全長」のような基準
- メーカーのカタログでは「自社基準はJIS値の1/2を目安」といった表現も見られる
ここを見落とすと:
- 「ホット材の板をそのままベースプレートにして、上にリニアガイドを直付け」
→ ガイドが板のうねりをなぞってしまう - 「黒皮板をテーブル代わりにして、治具の高さを揃えたい」
→ ロットや置き方によって面が変わる
👉 “平面基準”が欲しいところは、機械加工で面出ししたプレートを使うのが鉄則です。
黒皮板はあくまで 「そこそこ平らな素材」 と割り切るのが安全。
5. 設計者がハマりやすいパターンと対処
パターン1:板厚を「ゲージ」代わりに使う
- t=9の板2枚を重ねて「18mmスペーサー」として設計
- 現物を組んだらユニットごとに高さがバラバラ…
→ ⇒ 板厚+公差+黒皮+塗装で、簡単に ±0.3〜0.5mm くらいはズレると考えるべき。
対処:
- 重要な高さは 面削りしたブロックorスペーサーで管理
- 板重ねはあくまで「仮スペーサー」扱いにする
パターン2:板の耳を“きれいな基準線”と見なす
黒皮板の耳は、圧延やシャー切りの影響で、
- まっすぐ見えても微妙に湾曲している
- 黒皮の欠け・耳割れ・バリがある
ことが多いです。
対処:
- 位置決め基準は、別加工した基準フラットバーや当て板に任せる
- 板耳は「おおよその端」と割り切り、穴位置などは板中心から寸法を出す設計に。
6. まとめ:G 3193 板材は “ほどほど精度の素材”
- JIS G 3193 は、熱間圧延鋼板・鋼帯の寸法・形状・質量・許容差を定めた規格。
- 呼び板厚・幅・長さはあくまで公称値で、実物は JIS 公差の範囲で振れる。
- 黒皮板を加工なしで使うときは、
- 「板厚=精密高さ」
- 「板耳=精密基準線」
を前提にしないこと。
- 強度・剛性を担う“素材”として板を使い、
精密な基準や位置決めは“別加工した面や部品”でつくるのが安全な設計方針です。
