JIS G 3194「熱間圧延平鋼の形状,寸法,質量及びその許容差」とは?
――フラットバーをそのまま“部品”として使うときの注意点
1. この規格の位置づけ
JIS G 3194 は、熱間圧延の平鋼(フラットバー)について、形状・寸法・質量とその許容差を定めている規格です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 規格番号 | JIS G 3194 |
| 正式名称 | 熱間圧延平鋼の形状,寸法,質量及びその許容差 |
| 英語名 | Dimensions, shape, mass and permissible variations of hot rolled flat steel |
| 対象 | 熱間圧延で製造された平鋼(一般的なフラットバー) |
| 何を決めている? | 形状(幅・厚さ・角Rなど)、標準寸法、寸法・形状の許容差(厚さ・幅・長さ・真直度・平坦度・コーナードロップなど)、外観、質量 |
対応国際規格として、ISO 1035-3, 1035-4, ISO 9034 などをベースにしたJISであることも明記されています。
2. フラットバーの「呼び寸法」と実寸
平鋼は通常、
FB 12×100
FB 9×50
のように、
- 厚さ t(mm)
- 幅 b(mm)
で指定します。
この t, b が**呼び寸法(公称寸法)**であり、実物は JIS G 3194 の範囲でバラつきます。
2-1. 厚さ方向の公差
板と同様、厚さごとに ±○mm の許容差が規定されています。
- 薄い平鋼:比較的タイトな公差
- 厚物平鋼:若干広めの公差
設計での注意:
- 「FB 9×50 をそのまま“9mm厚スペーサー”として使う」のは危険。
- 厚み精度が欲しいところは、やはり加工プレートや研磨材を使うべき。
2-2. 幅の公差と「角落ち」
平鋼の幅にも、幅ごとの許容差が規定されています。
同時に、G 3194 では、
- 角落ち(corner drop)
- 曲がり(横曲り・そり)
といった形状誤差にも許容値が決められています。
フラットバーは一見「きれいな長方形」に見えますが、
- 角が丸く落ちている
- 幅方向に若干のテーパー・ねじれがある
のは普通です。
設計のコツ:
- 外形の“角”を基準位置とみなす設計は避ける。
→ 角はR付き+角落ち許容がある前提で、基準は中心線や加工した面にとる。 - 差し込み・抜き差し用途では、角Rと角落ちを見込んで 少し広めのクリアランス を設計。
3. 長さ・真直度・平坦度
3-1. 長さの許容差
棒鋼・形鋼と同様、長さごとに「+○mm / −0mm」などの長さ公差が示されています。
フラットバーを「ピッタリはめ込む」部材に使うときは、
+側に振れた分の逃げを構造側で持っておく必要があります。
3-2. 真直度(曲がり)と平坦度
平鋼にも、
- 長手方向の曲がり(横曲り)
- 幅方向の反り・ねじれ
- コーナードロップ(端部の垂れ)
に対して、相対値(%)や絶対値(mm)で許容範囲が規定されています。
実務でのイメージ:
- 長尺の平鋼は、机の上に置くとわずかに浮いたり、反ったりしているのが普通。
- そのままベースフレームにすると、組み上がりの面は“そこそこ真っ直ぐ”レベルにしかならない。
👉 リニアガイド・スライドレール・精密位置決め部品の土台には不向き。
必要な部分だけ 面削りした部材を使う or 平鋼に「加工面」を設ける ほうが安全です。
4. 設計者がやりがちな“フラットバーの誤用”と対策
ケース1:平鋼を「そのままガイドレール」にしてしまう
- FB 12×50 をレールとして使い、その上をローラーやスライドブロックが走る設計
- 実際には反り・ねじれで、スムーズに動かない/局部摩耗が出る
対策:
- フラットバーはあくまで**強度・剛性を持った“梁・補強材”**として使う。
- ガイド面は別部品(研磨フラットバー、加工プレート)で用意する。
ケース2:角・側面を基準に穴ピッチを追い込む
- 「端から20mmのところに穴 × ピッチ50mmで10穴」と設計
- 現物は角R+角落ち+幅寸法ばらつきで、隣部品と合わない
対策:
- 位置決めは 中心基準(センターから±) に変える。
- 穴列はスロット(長孔)を活用し、組立現場での調整余裕を持たせる。
ケース3:平鋼を「規格品の精密スペーサー」扱いする
- FB 9×40を何枚か挟んで高さを合わせる設計
- ロットやメーカーによって高さが変わり、ユニットごとに寸法がバラつく
対策:
- 高さ基準がシビアな場所は、専用スペーサーを機械加工する。
- 平鋼は、高さに多少のバラつきが許される補強・受け材に使う。
5. G 3193の板との違い(ざっくりイメージ)
| 観点 | G 3193(板・コイル) | G 3194(平鋼) |
|---|---|---|
| 形状 | 広幅の板・帯 | 幅の狭い長尺フラットバー |
| 用途イメージ | 大きな板、切板、レーザーカット母材 | ブレース・リブ・フランジ補強・バー材 |
| 設計での誤解 | 板厚・幅を「基準面」「基準線」にしてしまう | 厚さ・角・側面を「精密基準部品」扱いしてしまう |
どちらも「黒皮ままではそこまで精密ではない」という点は同じですが、
フラットバーの方が「そのまま部品っぽく見えてしまい、精密部品扱いされやすい」 のが落とし穴です。
6. まとめ:平鋼は“便利な棒材”だが「精密部品」ではない
- JIS G 3194 は、熱間圧延平鋼(フラットバー)の形状・寸法・質量・公差を定めた規格。
- 厚さ・幅・長さ・真直度・角落ちなどに明確な許容差があり、黒皮ままではそこそこ精度レベルと理解する。
- 設計者が黒皮平鋼をそのまま使うときは、
- 角R・角落ち・曲がり・板厚ばらつきを前提に、クリアランスと調整余裕を設計で確保すること。
- 精密なガイド・基準・スペーサーとして使う部分は、別途加工した部材に役割を分離すること。
