JIS G 3195の線材(ワイヤロッド)の形状とは?真直度・だれ・偏肉の形状精度も解説!形状・真直度・巻きぐせをどう見るか|JIS規格解説#5

JIS G 3195「線材の形状,寸法,質量及びその許容差」とは?

――コイル材・線材を“素材”として使うときの前提条件

JIS G 3195 は、
「線材(ワイヤロッド)」の形状・寸法・質量・許容差を決めている横断規格 です。

ここでいう「線材」は、

  • 棒鋼になる前のコイル状素材
  • 冷間引抜き鋼線の“元”
  • ボルト・ナット・スプリング・ワイヤ部品の素材

といった、“線径はそこそこ精度あるけど、あくまで素材” という立ち位置の材料です。

図面に「材料:○○線材 φ6」と書く前に、
どこまで寸法を信用してよくて、何が“要加工”なのか を整理するのがこの回の目的。


1. JIS G 3195 の守備範囲

ざっくり整理すると、G 3195 が決めているのは:

  • 線材の 形状(コイル状/丸断面/角・異形も含む)
  • 線径の 呼び寸法とその許容差
  • コイルの 質量・質量許容差
  • 真直度・だれ・偏肉 など、線材として最低限押さえるべき形状精度

であって、

  • 材質(炭素鋼・合金鋼・ステンレスなど)
  • 機械的性質(引張強さ・伸び)

は、別の材料規格(例:G 3506 鉄線、G 3521 ピアノ線、G 4309 ステンレス鋼線など)側 が担当します。

イメージ:

  • 材料の“性格”=材料規格(G 3506, G 4051, G 4309 など)
  • 材料の“形と寸法のルール”=G 3195

という役割分担。


2. 「呼び径」と実径の関係

2-1. 呼び径 φd と公差

線材も、棒鋼・平鋼・板と同じで、

  • 呼び寸法(呼び径) d がまずあって
  • 実際の線径は、そのまわりの ±許容差の範囲でバラつく

というルールです。

線径が大きくなるほど、公差も段階的に大きくなる構成になっています。

設計側が意識すべきポイントは:

  • 「φ6 の線材」と指定しても、実測 φ6.0 きっちりとは限らない
  • 素材としては十分でも、そのまま“ゲージ・ピン・基準シャフト”には使えない

ということ。

2-2. 線径を「そのまま嵌合基準」にしない

ありがちな誤解:

  • 「線材 φ6 をピンとして穴に差し込んで使いたい」
  • 「線材の径を基準に、ローラーのガイドにしたい」

→ 線材は、冷間引抜き鋼線ほどの径精度や真円度を保証しているわけではないので、

  • ロットによっては キツくなったりユルくなったり
  • 真円度・表面粗さも「素材としてはOK」レベル

にとどまります。

設計の方針:

  • 線材はあくまで「溶接・曲げ・冷間加工する素材」として使う
  • 嵌合やガイドなど 精密寸法が絡むところは、線材から再加工した部品側で管理 する

3. 形状・真直度・巻きぐせをどう見るか

線材は基本的に コイル状 で供給されます。
G 3195 では、

  • コイルの巻き方
  • 線材の 曲がり・ねじれ(真直度)
  • 表面欠陥の許容範囲

といった「素材としての最低限の健全性」も規定されています。

3-1. 「伸ばせば真っ直ぐ」は幻想

線材を治具ピンやシャフト代わりにしたくなる場面はありますが、

  • コイルを手で伸ばした程度では 完全な直線にはならない
  • 長モノにすると、どうしても わずかな曲がり・ねじれ が残る

ことが多いです。

対処:

  • 真直度が必要な用途では、
    • 線材を一度切断 → 旋盤/センタレス研磨で仕上げ する
    • 最初から「真直条鋼(straightened bar)」として供給される棒を選ぶ
  • 線材は「曲げ加工・フォーミング前提の素材」と割り切る

4. 質量・単位質量の扱い

G 3195 では、線材の 単位長さあたり質量(kg/m) とその許容差も定められます。

これによって:

  • コイルの「名目質量」と「実質量」を管理できる
  • 見積りや材料コスト計算で、長さ→質量への換算 がやりやすくなる

ただし、機械加工の現場では、

  • 線材を「何m使うか」のほうが多く
  • 質量は主に 材料費と運搬・取回しの目安 に使う

くらいの温度感で十分なことがほとんどです。


5. 材料JISとの組み合わせ方(現場での指定の仕方)

線材を設計図面や購買仕様で指定するときは:

  1. 材料規格(性格)
    • 例:JIS G 3506(硬鋼線材)、JIS G 3507(ばね鋼用線材)、JIS G 4309(ステンレス鋼線 など)
  2. 寸法・形状規格(形と寸法・公差)
    • 例:JIS G 3195 線材の形状,寸法,質量及びその許容差

という 二段構え に分けて考えるとスッキリします。

例1:炭素鋼線材 φ6 をばね素材に使う場合

  • 材料:JIS G 3506 ○種(用途に応じて)
  • 形状・寸法:JIS G 3195 φ6 線材

例2:SUS304 線材 φ3 を成形部品の素材にする場合

  • 材料:JIS G 4309 SUS304 ステンレス鋼線
  • 形状・寸法:JIS G 3195 φ3 線材

ポイント:

  • 「SUS304 φ3 線材」とだけ書くと、
    • どのJISに基づく SUS304 なのか
    • 寸法・公差をどのJISで見るのか
      が曖昧になる
  • 「材料JIS + G 3195」のセットで指定すると、材料の性格と寸法のルールが明確になる

6. 設計者・加工屋目線での“使いどころ”整理

線材(G 3195)」を前提にしておくと良いこと/注意点を最後に整理:

良い使いどころ

  • 曲げ加工・フォーミングして ばね・フック・簡易フレーム を作る素材
  • 抵抗溶接やスポット溶接でフレームに付ける 補強リブ・ワイヤガード
  • プレスや冷間成形の 元素材(コイル供給ライン)

気を付けるべき NG っぽい使い方

  • 線材径をそのまま 「基準ピン」「精密シャフト」「リニアガイドの転動面」 に使う
    → 径精度・真円度・真直度・表面粗さが足りないことが多い
  • コイルを伸ばしただけで “真っ直ぐな棒”として扱う
    → 曲がり・ねじれが残り、寸法基準や摺動には不向き

7. まとめ:G 3195 は「線材を素材として扱うための土台」

  • JIS G 3195 は、線材(コイル)の形状・寸法・質量・許容差を決めている横断JIS
  • 線材はあくまで 「曲げ・冷間加工・成形のための素材」 であり、
    そのまま精密ピン・ガイドに使う前提で見ない のが安全。
  • 図面や仕様書では、
    • 材料の性格 → 材料JIS(G 3506 / G 4309 etc.)
    • 形状・寸法のルール → G 3195
      をセットで押さえると、メーカー・加工屋との齟齬が減ります。

 

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